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望む結婚
城内の廊下を足早に行く背を見つけると、僕は嬉々として声を上げた。
「レオ団長! 朝の鍛錬ですか? お疲れ様です!」
手をぶんぶん振って駆け寄ると、その背はゆっくりと振り返る。
同時に肩から流れ落ちた絹髪は、日の光を受けてきらきらと淡い金の色を照り返した。
「うっ、眩しい……! 夜行性の僕は、団長の眩しさに目がやられます……!」
「アル、お前は今から鍛錬のようだな。こんな真っ昼間まで、どこをほっつき歩いていたんだ」
あ、めっちゃ綺麗に無視された。そんでもって、痛いとこついてくるなあ……。
「野暮なこと聞かないでくださいよ。可愛い仔猫ちゃんを放っておけず、仕方なく……」
「ほう……猫の慈善活動か。お前にしては結構なことだな」
「ですよね! やっぱり僕は間違ってない!」
団長が『猫』の意味合いに気づかないのをいいことに、僕は昨夜の後ろめたい行為を正当化する。
これで、恋人のエリーゼが彼に相談を持ちかけてきても安心だ。
「ところで団長、本日いよいよマリアンヌ・シンシア嬢とご結婚ですね。色々とご準備は大丈夫ですか?」
諸々すっかり安心しきった僕は、ここぞとばかりに彼に色恋の矛先を向ける。
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