0.君の声、私の声。

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小学六年生って、暇。 忙しそうだけど、意外と。 「最高学年」という肩書きを異様に重く乗せてくる熱血教師への対応以外は。 でも、私は知っている。 どれだけ「子供には可能性がある!」と叫ぶ教師も、どれだけ明るい子でも、みんな諦めている。 教師はお金目当て。 明るい子は人間関係に疲れてる。 ああ、嫌だ。 そんなことを考えていたら、目の前から走ってくる男子が! 咄嗟に避けようとしたけれど、ビックリして固まってしまった私の体は動かない。 「どうしようっ、ってきゃぁ!!」 ぐわっ、と私は後ろに倒れる。 「っ、ごめん」 男子は言う。彼は確か、月詠星矢(つきよみせいや)君? 彼は今年の5月くらいに来た転校生。実はあまり話した事がないんだ。 そう言えば、心の声。聴こえないなあ。 ──聴こえない? おかしい。心が動いている限り、私には心の声が丸聴こえなのだ。 そう思っていたら、彼の顔がロボットの様に笑っていない様に見えてきた。 「っ、ごめんね、怪我はない!?私、もう行くね!」 何か、居心地が悪くなって走って逃げた。 なんだろう。言いようのない苛立ち?が私の中に溜まって渦を巻いていた。 ぐるぐる、ぐるぐると私の頭の中を『(ハテナ)』が彷徨(さまよ)う。 「君のこと、もっと知りたいな」 私は夜空に向かって、呟いた。風に靡く君の髪の毛を想像してついついニヤけてしまう。 どうして、知りたいと思うんだろう。 この気持ちは?私のこの(キモチ)は──。
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