1.月が星空を照らす

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「終わった…」 算数の時間、私は一人嘆いていた。 何をって?そりゃあスピーチのこと。 緊張して噛んじゃったし、言ってることも意味わかんなかったし、もう終わった。最悪。 「出席番号21番は誰だ?」 「星宮じゃね?」 「星宮、この問題を答えろ」 先生が私のことを指名した。 私は考え事に精一杯で授業を聴いていなかった。 「っ、えっと…」 どうしよう。難しい。それに緊張して考えられない。 「どうしたんだ星宮。いつもはわかってるじゃないか」 っ、わかんないよ!いつもって何!? 『星宮、まじかw』『こんなのもわからないんだ』やめて…。『バカじゃん』『アホ確定』『バカ宮』っ、やめて。『顔はせっかく可愛いのにwまあバカって可愛いもんなw』『いままでズルしてたの?』『呆れた』『こんなの誰でもわかるでしょ』 やめて、やめて!もう、聴きたくない! 『星宮、この問題は“反比例”している。“反比例”については教科書78ページに載ってる』 みんなの悪口の中に、一つ輝いている声があった。 「えっと、この問題は“反比例”しているので、③番は56になります」 教科書を見ながら、必死に問題を理解した。でも、合っているかわからない。 『…正解だ。ナイス!』 ああ、良かった…。 今の声は、月詠くん…? っ! そこで私はとあることに気づいた。 ──月詠君って、確か声が聴こえなかったはず、なのに。 聴こえた。この事実は揺るがなくて、でもこのコトは、きっと彼の事を知る手助けになる、はず。 少し胸が暖かくなった。
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