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「終わった…」
算数の時間、私は一人嘆いていた。
何をって?そりゃあスピーチのこと。
緊張して噛んじゃったし、言ってることも意味わかんなかったし、もう終わった。最悪。
「出席番号21番は誰だ?」
「星宮じゃね?」
「星宮、この問題を答えろ」
先生が私のことを指名した。
私は考え事に精一杯で授業を聴いていなかった。
「っ、えっと…」
どうしよう。難しい。それに緊張して考えられない。
「どうしたんだ星宮。いつもはわかってるじゃないか」
っ、わかんないよ!いつもって何!?
『星宮、まじかw』『こんなのもわからないんだ』やめて…。『バカじゃん』『アホ確定』『バカ宮』っ、やめて。『顔はせっかく可愛いのにwまあバカって可愛いもんなw』『いままでズルしてたの?』『呆れた』『こんなの誰でもわかるでしょ』
やめて、やめて!もう、聴きたくない!
『星宮、この問題は“反比例”している。“反比例”については教科書78ページに載ってる』
みんなの悪口の中に、一つ輝いている声があった。
「えっと、この問題は“反比例”しているので、③番は56になります」
教科書を見ながら、必死に問題を理解した。でも、合っているかわからない。
『…正解だ。ナイス!』
ああ、良かった…。
今の声は、月詠くん…?
っ!
そこで私はとあることに気づいた。
──月詠君って、確か声が聴こえなかったはず、なのに。
聴こえた。この事実は揺るがなくて、でもこのコトは、きっと彼の事を知る手助けになる、はず。
少し胸が暖かくなった。
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