2.【銀髪の少女と灰色の街】

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 「ゲートを開いた時の電磁波と、索敵を避ける為にあんた自身にジャミング施してた影響で通信状況はさすがに悪いわねえ……。まあ、やっと通信自体が繋がって良かったわ。それでかすみ、そっちの状況はどんな感じ?」  「いや、だから、目標は……」  「……目標はジオフロントからさらに地下1500メートルは下よ。スライブガーデン社の“旧奥多摩研究所”地下10階、そこでネクターの開発と製造を秘密裏にやってるって噂……あれ、本当だったのね……。それで、状況は?」  「んんーー……だ、か、らッ!!その目標のすぐ目の前まで来てるってーの私ぃッ!こんな“(おび)えたナス”みたいな奴だとは思わなかったけど。……ッたく、本当にこいつが『アネモネ』の適合者なの?」  怯えたナスみたいな奴……とは、僕のことなのか……?それに、アネモネ……?という悠佑の思考を他所に、悠佑を蔑むような目をして話すかすみとジャンと呼ばれる男との通信が続く。    「いいこと、かすみ。あんたそこに突入するまでは静かに援護を待ってなさッ……て、え?ええッ!!い、今あんたなんて言ったぁ!?」  「…………怯えたナス?」  「違うわよッ!ていうか何よそれッ!じゃなくて……目標が、目の前いる!?ちょ、ま、あ……あなたまさかそこに単独で突っ込んだってわけじゃないわよね!?え……そうなの?まじで?そこ前情報だと難攻不落って話なのよ?え、でも……突破しちゃったのよね?それ、めちゃくちゃすごいけど……めちゃくちゃ引くわ……あたし……」  それにかすみが「うっさいわねぇー……」と少し項垂れながら頭を掻く。    「い、良い感じに出力も上がってたし?いけるかもって思ったのよ……」  「はあー?何それ!?それ完全に作戦無視の独断先行まるちゃんじゃない……。あんた、このミッションの重大さわかってんの!?失敗したら取り返しがつかないのに……。あー……これ、さすがにマスターも黙っちゃいないと思うわ……あたし……」  「あぁーもうッ!!いいのよそんなことは!作戦はどうあれこうしてちゃんと目標の椎葉悠介を見つけたじゃない。それよりも、今はここからの脱出が最優先でしょッ!?ジャン、脱出用のゲートはどこに展開できるのよッ?」  「はぁー……まったくこれだから小娘は……。ちょっと待ってなさい、すぐに座標を送るわ」  目の前で繰り広げられた銀髪の謎の少女と、ジャンと言う男の声なのに女口調という謎の人物とのやりとりに悠佑はもはや口を開けてそれを傍観しているしかなかった。
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