2.【銀髪の少女と灰色の街】

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 「(……この子はなんなんだ……なんで僕の名前を知ってる……?それに、あのやりとりをしてた男……いや女……?ああ、もう……本当に……本当に全部わけがわからない……ッ!?)  悠佑がそうして戸惑っているところに、再び先程のジャンと言う男の声が聞こえてきた。  「はい、お待た。座標共有するわね」    すると、通信を行っていたディスプレイとは別に新たなディスプレイがかすみの前に浮かび上がり、かすみが今いる現在地と『ゲート』と呼ばれる空間転移を可能とするワープホールを示した地図(マップ)がそこに表示された。  「んーと……スキャンした限りでは、そのマップに出てるあんたが空けた馬鹿みたいにでかい大穴付近には警備兵たちがわんさかいて、“重装甲機動兵器(ヴェセル)”20機もすでに搭乗配備済み、あら、“大型(バレル)”も5機いるじゃない。それとぉ?わぁお、地対空ミサイルもご丁寧にあるだなんて……。来た道を戻るならあんた一人で余裕で行けるでしょうけど、目標のその子を連れてはさすがに色々と分が悪いわ。それに、目下エレベーターシャフトからは別に何機か降りてきてる」  「つまり、行き場もないし時間もない。絶体絶命って感じ?」    「そゆことっ。でも、それをなんとかするのがオペーレーターであるあたしのお仕事よ♪いい、よーく聞ききなさい、今あんた達のさらに約100メートル真下にはここの緊急用脱出経路のトンネルが走ってる。それを辿って上へあがればジオフロントまでは出られるはずよ。そこから東へ2キロ、そこにゲートを開くわ。そんでミサイルよりも先に目標と共にゲートに入る、あんたならできるでしょう?かすみ」  その通信にかすみはニヤリとして「了解」とだけ答えた。  空中に浮かんでいたディスプレイはフッと消え、かすみは悠佑のすぐそばまで歩み寄った。    「さてと……じゃあ、そんなとこでいつまでも震えてないで私と一緒に来なさい」  「き、き、来なさいって……!?そ、そんなの無理だろ……なんなんだよいきなり……僕を……僕をどうする気なんだよッ!」  「うるさい、時間がないの」  そう言ってかすみが悠佑を睨みつける。  壊れた扉の向こうから重装甲機動兵(ヴェセル)達が迫り、その数と距離が地響きとなって伝わってくる。明らかに時間は無い、かすみはベッドの上にいた悠佑へ詰め寄り彼の腕を左手で掴み上げた。  「痛ッ!ちょ、何するんだよッ!やめろッ!!僕はここに居たいんだ!僕には家族とか、友達とか、僕が戻って来ることを待っている人達がきっと、きっとたくさんいるんだかッ…………!?」  抵抗しようとしたその刹那、悠佑の腹部に強烈な痛みが走った。  「……ゴフッ……ボエッ……ゴボッ…………」  腹の底から何かがこみ上げそれが口から零れてくる。生暖かくて鉄臭い味、そして自分の腹に突き刺さった白く細い腕を悠介は目にした。
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