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「ひ、被検体が……目を覚ましました……」
そんな低い男の声が聞こえた。
ふと目を開くと、視界に入るその光の眩しさに僕は思わず目を背けた。
眩しい……ここは……僕は……なんで…………。
意識が少し朦朧としている。まるで長いこと変な夢でも見ていたような気分だ。その眩しい光の正体が、見覚えのない天井に取り付けられた白々しいLEDライトだということに気づくまでにはしばらくの時間がかかった。
背中には柔らかいベッドの感触があり、少しひやりとした冷たさに服は何も身に着けていないことが分かった。耳元ではピッピッという規則正しい電子音が聞こえてくる。
――これは……心電計の音……?ここは……病院……なのか……?
「了解しました……これより……被検体の検査を行います……。え、ええ、はい……それは十分わかっています……。見た目はただの少年ですが、細心の注意を……」
なんだか怯えた様子で男は誰かと話をしている。視線を天井からその声のする方へ移すと、そこには白い防護服のようなものに身を包んだ男の姿があった。会話が終わった様子の男は僕のすぐそばまで来ると、手に持っていた機械を僕の体へと向ける。
――何をする気だ……?
「では、スキャン開始します……」
どうやらその男は手に持った機械で僕の体を調べるつもりらしい。男は機械の先端を僕の頭の上から下に向かいゆっくりと僕の裸の体に這わせていく。男の呼吸は少し荒く、何故か微かに震えているようで、それに、時折息を漏らすように“変な独り言”を呟いている。
「嘘だろ……さっきまでほとんど体が……なのに、こんな……一瞬で……」
――この人は……何を言っているんだろう……。
それからしばらくすると、検査は終わったようで「スキャン……終了」と言う声と共に、大きな溜息を吐くのが聞こえた。
「はああ―…………ひ、被検体の検査……終了しました……。パルスに異常はなく……その他の数値も……正常です。も、問題、ありません……。私には、とても信じがたいことですが……」
男はそそくさと僕のそばから離れると、次は大きなモニターに繋げられた端末に指を這わせ操作し始めた。その隣には得体の知れない大きな機械がいくつも並び、それが僕の周りをぐるりと取り巻いている。
そこからはそれぞれ無数の管が伸びていて、それを辿るとその全てが僕の体へと集まっているようだった。
――なんだ、この管……?なんで僕の体にはこんなにも管が繋がれているんだ……?
まだ頭がぼーっとしているせいか、思考がうまく働いてくれない。僕はおもむろに首を少しひねり辺りを見渡してみた。
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