私の「運命の人」

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それは、この想いを伝えれば言われると覚悟していた言葉だった。だが、実際に言われると乃愛の心は悲しみに潰されてしまいそうになる。胸が苦しくなり、乃愛はゆっくりと体を離す。 「甘粕先生……」 秀一の目は、どこか寂しげに見えた。乃愛がまた口を開こうとすると、「もう今日は帰りなさい」と遮るように秀一は言う。 「玄関まで送りますから」 秀一はそう言い、椅子から立ち上がろうとする。ここで大人しく帰ったのなら、またいつも通りの日々に戻るだろう。秀一は何もなかったフリをするはずだ。しかしーーー。 (非国民だと罵られても、私は……!!) 乃愛は、素早く立ち上がろうとする秀一の肩を押す。そして秀一が何かを言う前に、自身の唇を秀一の唇に押し付ける。 唇を何度も乃愛は重ねる。秀一は困った表情をしていたものの、抵抗することはなかった。秀一が本気を出せば、乃愛は簡単に離されるはずだ。しかし秀一が拒まないことに、乃愛の胸が高鳴っていく。 乃愛と秀一。二人は政府によって決められた「運命の二人」ではない。しかし、乃愛にとって秀一は「運命の人」なのだ。 真実でもあり、偽りでもある運命で結ばれた二人は、また唇を重ねた。
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