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献上村
地図に、名前も、住所もない。だが存在するという村を僕はやっと見つけた。日本のどこかにあると噂を信じ着いた村。見つけた村は感慨深いものはない普通の村だった。
「あら珍しい。旅人さん?」
僕と年頃の変わらぬ女性が声をかける。艷やかな黒髪と白い肌につい息を飲む。
「はい。ただ申し訳ないけど見るとこもなさそうだし帰ろうかと」
「そんなことないよ。今夜、お祭だよ。見てけば。夜まで私の家にいていいから」
知らぬ人にほいほい着いていくのは賢くないが、僕は首を縦に振った。それも夏の力なのだろう。
名も知らぬままに家を訪れ夕飯と西瓜までご馳走になる。彼女は一人暮らしらしい。
夜が更けて彼女が浴衣姿になると目のやり場にも困った。
「ほら花火」
彼女が外に指を差した方向には花火が上がっていた。見入っていると彼女は突然に灯りを消した。
「ねぇ。いいことしない?」
顔が火照るのが分かる。興味はあるが……。
「しようよ。童貞のまま死にたくないでしょ? 私も処女のまま死にたくない」
え? と思い再び窓の外に目をやると火の手に包まれていた。
「逃げなきゃ!」
立ち上がる僕の手を彼女は引く。
「無駄よ。村の別名は献上村。若い男女を生贄にして食べる村だもの。諦めてしようよ。どうせ肉になるんだ。いくら精を放っても後腐れないし」
「そんなの許されないだろ!」
彼女は立ち上がり帯をすると解く。
「なぜ地図にないか名前がないか。それは政治家のえらい先生も警察のえらい人も若い男女の肉を食らう背徳さと好奇心に逆らえないからよ。さぁ抱いてよ」
火の手は次々にまわる。僕を息を飲んだ。なるやるべきことは。僕の手は白い小ぶりな乳房に向かう。
好き勝手やってやる。呪いの村に来た僕が馬鹿だった。
桃色の乳首に口をつける。
「いい子。名前なんか聞かないで。ただの肉なんか聞いちゃ駄目。巻き込んで悪いけど、私は君を気に入ったんだ。一緒に死んで」
こんな愛の言葉があるとは僕は知らなかった。
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