ベストチャンス・ワーストタイム

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貴矢くんは運転席に乗り込んだ。 私は助手席のドアを開けて乗り込む。 「おじゃまします……」 きついタバコの匂いが漂ってきた。 「貴矢くん、タバコ吸うの?」 「いや。俺は吸わない。親父は結構吸うけどな」 車の中も、かなり汚かった。 灰皿には吸い殻がたくさん溜まっていたし、お菓子の空袋とか、いろんなゴミが車内に残されていた。 貴矢くんとドライブできるのを期待していた私は、なんとなく興が冷めてしまった。 車は走り出す。 貴矢くんは言った。 「ジュース買いたいから、ちょっとコンビニ寄ってもいいかな」 「どうぞ」 コンビニの狭い駐車場には、1台分のスペースが空いていた。 貴矢くんは巧みなハンドルさばきで、1回でねらいの場所に車を入れる。 「すご~い! 貴矢くん、車庫入れ得意なんだね! 私も免許もっているけど、何回も切り返しちゃう」 「ははは。オレは車庫入れ、得意だぞ」 貴矢くんはそう言うと車を降り、コンビニに入った。 車は正直、汚いけど、貴矢くんはイケメンだし、車の運転もうまいし、やっぱりステキな人だな…… そんなことを考えながら、私は助手席で待っていた。 「これ、志保の分」 戻ってきた貴矢くんは、私にジュースの缶を差し出した。 「え? いいのに……」 「いいからいいから」 車は再び、私達の住む街へと走り出す。 隣には貴矢くんが座って運転している。 ハンドルを持つ貴矢くんの腕を見た。 なんだかドキドキしてきた。 やっぱり、私は貴矢くんのことが好き。
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