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1. 契約
うんうん、いい感じじゃない？
赤いグレーズに白の星型スプリンクルがかかった新発売のドーナツの写真に、ちょっとだけキラキラなフィルター加工をしてSNSにアップする。授業が終わって部活動の時間である今、帰宅部の友達による『いいね！』がピコピコと増えていった。
本格的な暑さを迎え、なかなか日が傾いていかずにぬるく重い空気がどっしりと居座っているかのようなこの季節。
桜凜学園高等部1年の榊 蓮香（さかき・れんか）は、一人でのんびりと歩きながらショーウインドーに映る自分の髪をクイクイッと引っ張った。
「ちょっと髪伸びてきたな……晴兄に切ってもらおーっと」
樹脂ポストにいくつものアクリルビーズを組み合わせたボンキュッボンなデザインのピアスは最近自作したものだが、せっかく気に入っているのに髪で隠れてしまう。かわいいピアスが見えるようにしたくて、そして髪のアレンジをするのは面倒で、基本蓮香はショートカットヘアだ。
「さてと、そろそろ学校に戻ろうかな」
スマホで時刻を確認すると部活動の終わる時間が近づいていたのだ。
空に向かってグッと伸びをしてから踵を返した。
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