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「ねー志艶……私のこと、結婚したいって思うくらいすっごくすっごく好きになってくれた?」
志艶の胸に埋まりながらそう聞いたら、志艶はまた黙り込んだ。
どうしてそこで黙り込むかな……。やっぱりショックはショックだ。ちょっと大人のキスまでしたくせに。
諦めるつもりはないけど、ちょっと拗ねて意地悪したくなる気持ちもわかってよ。
「ふぅん、じゃあもういい。それなら志艶とは付き合わないことにする」
「……ん?」
「あ、違うか。ちょっとの間、一応彼氏だったから、別れて今はもう元カレ」
「は?」
「じゃあね、元カレさん」
「ちょっと待て」
「私のこと、ものすごーく好きになってから出直してこーい」
「……」
「ほら~、そこで『ものすごーく好きだよ』って返してくれば私の機嫌も治るのにな」
「……」
「もう知らない!」
「いや……ちょっと待て。好きは好きなんだ。だけど俺にもいろいろと事情があるというだけなんだ」
『好きは好きなんだ』だって。ニヤけてしまいそうな顔を必死に引き締めた。
「事情ってどんな?」
「……」
「はい、さようなら」
「理不尽だ……」
困った顔をする志艶を見てフフッと笑う。
ま、どうせ好きなんだけどね。それに志艶のことだ、また何か勝手にわけのわからないことを考えてるのかも。ちょっとは信用するようになってきたのよ。こっちだって成長してるんだから。
そっちがそのつもりなら、こっちはこっちで好きなようにするだけだ。
「志艶のバーカ」
「バカではない方だと思うが否定もできない気がしてきた……」
「いいもん。今度は私がストーカーしてやるんだから。覚悟しろー!」
そう言ったら、嬉しそうに志艶は笑った。
……喜ぶところじゃないけどね。
変な人。
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