1. 契約

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「はい?」 「この場所、知ってたら教えてくれないかな? わからなくて困ってるんだ」 助けを求められたものの、正直言ってなんとなく怪しい。 だって、道を聞かれたのがお年寄りならまだわかる。でも目の前にいるのは無駄に口調だけ優しげな二十代半ばほどのちょっとチャラく見える男性だ。 ……今時、スマホの地図アプリを駆使すれば一人で何とかできそうなものじゃない? でも本当に迷子になってる機械音痴&方向音痴っていう線も捨てきれない。いや、でもな……。 「ごめんなさい、今忙しいので」 そう返して立ち去ろうとしたのだが―― 「どうしてもお願い!」 そう言われて腕をむんずと掴まれた。 「えー……」 「頼むよ」 「無理」 「このとおり。本当に困ってるんだ。頼むって」 頭を下げられて困った顔で何度も頼まれれば、怪しさ7・心配3の割合くらいだとしても助けるしかないと思わない?  仕方なくその場所に連れて行くことにした。
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