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「いやぁ、助かったよ。ありがとう。本当にありがとう」
案内した場所は裏通りとはいえ、お店が多く並んでいてそんなに怪しい場所ではない。でも嫌な予感がするから一応さっさと立ち去ることにした。
「じゃあね」
「あー、待って待って。君かわいいよね。大学生くらい? よかったら、お礼にお茶でもどう?」
「えっ、いらない」
「そう言わないで。お願い」
「いらないって」
「頼むよ~」
断っても断っても引き下がらず、腕を掴まれて「お礼をしないとこっちの気が済まないよ」なんて濁った声の善人顔で笑って言う。
……いや、この人どう考えても悪人でしょ。
どうして悪人だなんてわかるかって? どうしちゃったのって問いたいくらい声がダミ声だから……ではなくて。
だってね、掴まれてる腕がかなり痛いんだもん。善人は力づくでお礼なんてしないでしょ?
……もう面倒だから蹴り入れて逃げようかな。
やっちゃう?
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