1. 契約

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「いやぁ、助かったよ。ありがとう。本当にありがとう」 案内した場所は裏通りとはいえ、お店が多く並んでいてそんなに怪しい場所ではない。でも嫌な予感がするから一応さっさと立ち去ることにした。 「じゃあね」 「あー、待って待って。君かわいいよね。大学生くらい? よかったら、お礼にお茶でもどう?」 「えっ、いらない」 「そう言わないで。お願い」 「いらないって」 「頼むよ~」 断っても断っても引き下がらず、腕を掴まれて「お礼をしないとこっちの気が済まないよ」なんて濁った声の善人顔で笑って言う。 ……いや、この人どう考えても悪人でしょ。 どうして悪人だなんてわかるかって? どうしちゃったのって問いたいくらい声がダミ声だから……ではなくて。 だってね、掴まれてる腕がかなり痛いんだもん。善人は力づくでお礼なんてしないでしょ?  ……もう面倒だから蹴り入れて逃げようかな。 やっちゃう?
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