宿星の恋人

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* 「……王子様、ここがその娘の家にございます。 おい、リン…起きてるか?」 村長は、けたたましく扉を叩きます。 「もう良い。 あとは私一人で行く。」 「は、はい。では、失礼致します。」 扉を開くと、中は日中だというのに薄暗く空気がじっとりと湿っていました。 「邪魔をするぞ。 ここにリンという者はいるか?」 「……はい。こちらに……」 か細い声が奥の部屋から聞こえ、アーロンはその声の方に歩いて行きました。 粗末な寝具に包まれて、横たわる女性は、痩せて青白い顔色をしていました。 その女性を見た時、アーロンの心臓はいまだかつて無かった程、激しく脈打ちました。 (なんと美しい娘だ…! この世にこれほどまでに美しい娘がいようとは… 私の妃はこの娘しかいない!) アーロンは、リンを見て、不思議な程強く惹きつけられました。 彼の心に、熱い炎が灯ったのです。 「どなた……ですか?」 「私は、アーロン王子だ。」 「お、王子様…!?ま、まさか、あなたは…」 驚いて、体を起こそうとするリンを、アーロンは優しく制しました。 「無理をするな。 そのままで良い…」 「も、申し訳ございません…」 「そなた…具合が悪いらしいが、どこが悪いのだ? 医者には診せておるのか?」 「はい、それが……」 リンが話しかけた時、ベッドの下から猫が姿を現しました。 痩せこけて、毛が抜けまだらになった猫でした。 「なんと薄汚い猫だ! よもや、おまえがこの者に何か悪い病気を移したのではあるまいな! 今すぐここから出て行け!」 アーロンは、乱暴に猫を追い立てました。
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