人工知能JCN

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人工知能JCN

 国を正しい方向へ導く為に、無能な政治家を消す為に開発された人工知能が「JCN」である。表向きは「有名なテクノロジー会社、IB◯に続け」と願いを込めて命名された。また、アルファベット順では、Iの次がJである為、Jは、Japanの頭文字にも当てはまる。  その人工知能は、密かに開発されていた。政府が導入を焦らせたカードの一件で、下請けの下請け……で働く技術者は疲弊し、責任だけを押し付けられていた。そうして、その技術者は心を病んだ。だが、その技術者には常人には理解出来ない程の知識とスキルが有った。  その技術者は、政府が金を中抜きする為に作った「エセ子供目線庁」にも腹を立てていた。「エセ子供庁」の考える「子供目線」は、ただ一部の子供を喜ばせるだけの策だった。サッカーが好きで「スポーツ観戦が出来る余裕のある子供」だけを喜ばせる策だった。  餓えや渇きに苦しみ、身体や心の痛みに耐え、「死なない為だけを考えて」日々を過ごしている「本当に助けを必要としている子供」の目線を、政治は完全に無視していた。  恵まれた育ちの政治家には、「餓えに苦しむ子供の目線」にはなれない。なれないどころか、しゃがもうと膝を曲げることすらしない。日々、おだてられて過ごす政治家には、「毎日の様に暴言を吐かれて暮らす子供の目線」など分かりはしない。税金に守られた生活をする政治家には、「子供手当が本来の目的で使われず、必要なものに事欠く子供の目線」など存在すらしていない。  子供の頃から、整備されたレールを走り、事故を起こしても権力で無かったことにさえ出来る。生まれに恵まれていただけなのに、全てが自分の能力だと勘違いしてしまった無能な政治家達。それを消し去り、「本来の意味での『子供目線』を知る者達」による政治。開発者が目指すゴールが決まってから、人工知能の開発は始まった。  人工知能は、ただ開発しただけでは能力を発揮出来ない。開発されたばかりの人工知能は、生まれたて赤子の様なものだ。人間の赤子が「遺伝子に組み込まれた本能で不快を泣いて知らせる」ように、人工知能はプログラムされた通りに答えを返す。  真っさらな人工知能は、どんな情報を与えるかで様々な変化を遂げる。それは、まるで「どう育てるかで子供の能力や人となりが変わる」ことに似ていた。それ故、開発者は自らの子供を育てるかの様に大切に、また慎重に、人工知能へ情報を与えた。  時に間違った回答は修正し、プログラム自体にも修正を加えた。また、人工知能の開発と平行して、法改正の為に様々な人脈やスキルを行使した。そうでなければ、いざ人工知能が運用可能なレベルに達したとしても、使用されない。故に、開発者は持てる全ての力を使って、国を正しい方向へ導こうとした。
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