「放課後の憧憬」

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「放課後の憧憬」

 放課後、教室で音楽を聴きながら、まどろんでいる。部活にも入らず、ほとんど空になった教室で、音楽鑑賞。最近のブームだ。  斜め前では、席替えで傍になった瀧田(たきた)の焦げ茶の髪が、窓から入る夕焼け梯子に照らされていて、どこか神々しい光景にも見えてとれる。あいつなんだか、どこか雰囲気があるなって思う。  瀧田とは、結構親しい。クラスの委員が同じで、活動をするのに半年──高校二年にあがってから、初夏に至る今までいろいろと話したことがあった。好きな音楽の話。本の話。映画の話。趣味が、まったく同じというわけではないが、だからこそ刺激を求めるのか、互いがすすめるアーティストのライブに行ったり、映画をハシゴしたり、二人そろって図書館に一日入り浸ってみて気に入ったら本屋で買ったり取り寄せたり、と。色々と、新しいものを取り入れると言う口実で。お互いかはわからないが、俺は相手の瀧田という人物の輪郭を知った。  瀧田は本を読みながら、片耳でイヤフォンをしており、僕と時折言葉を交わしながら、のど飴を舐めてる。くせになるから好きなんだよねと、リュウカクサン、という飴ををたまにお菓子代わりにしてるのはよく見かける。俺はもらって食べたことがあるが、あまり独特なハーブの匂いが好きではない。 「シモンはさ」
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