「放課後の憧憬」

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 股を閉じ、机の上で座り込むと顔をさらにちかづけ、耳元を舐めてから、噛んでくる。実は耳が弱い僕はそれで「ぅあ、」情けない声が漏れた。ピアスがあるからと耳が弱くない訳ではない。耳の中に生き物のような舌が侵入してくる。ちゅぷ。ぷちゅぷちゃ。気持ちがよく、くすぐったく、際限なく味わったことのない感覚だ。もう自身は完全に起きているし、れろれろと続けられると、一人で達してしまいそうなほど。 ( こんなの、しらない。 )  僕は最後の理性を振り絞って、瀧田の両肩を強く掴み、ゆっくり、しかし強く、離した。瀧田は落ち着いたようすで。 「どうして?」  伏し目がちに、目を合わさず訊ねてくる。  どうしてって。目の前のお前に、あえなく殺されるところだったからだよ。 「シモンは、気持ちいいって思ったんでしょ、こんなことで」  ホラ、とスラックスの下。勃起したそれをそばで眺めている瀧田に、「だからぁ、」と顔から火が出る思いで声を上げてやろうと思ったとき。僕の片手をとった瀧田は。  ──。  爆発した。僕の手が、何か柔らかくいつまでも触れていたい心地のものを。  瀧田の胸を、掴んでいた。 「おまえっ……、なに考えてるんだよっ……」
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