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れんしゅう
「君はどうしてそんな小さな翼で飛べるの?」
ぼくと同じくらいの身長なのに、小さな翼。
体が羽のように軽くなかったら飛べないと思う。
「大人になったらもっと大きな羽になるの。」
「ふーん…、じゃあ、飛ぶ練習をしなくても、翼が大きくなったら飛べるようになるんだね。」
ぼくとは違うんだ。
「練習しないと飛べないわよ。翼をどうやって動かすかわからなければ、そのまま落っこちちゃうでしょ。」
「動かせないの?」
「うん。」
「どうやって動かすの?」
「わかんない。」
「わからなかったら飛べないよ。」
「だから練習するんでしょ。君は飛べるけど、私は本当に飛べないんだから。」
「……」
そうだ、ぼくは一応飛べるんだった。
「君、名前は何て言うの?」
「桃よ。君は?」
「銀だよ。」
「じゃあ銀ちゃんね。」
む、『ちゃん』は何だか女の子みたいだ。
「じゃあ、君は桃くん。」
「『くん』は可愛くない。」
「じゃあ、桃ちゃん?」
「何で『?』がついてるの。」
桃ちゃんがツンっとそっぽ向いてしまった。
どうしよう、謝った方がいいのかな。でも、悪い事を言ったかな?女の子はむつかしい。
「ふふふ、銀ちゃんは面白いね。」
そんなこと言われたことがないけど、何が面白かったんだろう。
女の子はよくわからない。
「ねぇ銀ちゃん、私を抱っこして飛んでみてよ。」
「…無理だよ。落っこちたらあぶないよ。」
「この木の高さなら平気なんだよね?」
「そうだけど…」
それなら、この木の上にいたって同じじゃないか。わざわざ飛ぶ必要がない。
「練習するって言ったのに、なんで何もしないの?」
高い所で飛んでも落っこちない方法がわからないから、練習なんて本当は出来ない。
失敗したら、怖い。
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