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これは君との再会のお話。
職場の先輩が、最近元気がなく、よくため息をつく。さすがに心配になり、声をかけた。
「先輩どうしました。顔色が悪いですけど、体調悪いですか?」
すると堰を切ったように、話しはじめた。
話を聞いている限りは、確実にストーカーだろうと思える内容だった。しかも盗撮もされているようだ。
しかし、この話すごく身に覚えがある。そうだ、うちの学生時代の運命の子がこんなことをする子だったなぁ。そういえばあの子元気にしてるかな。
友達がいない講義のときに、座る席に迷っていたら声をかけてくれたんだよね。それからずっと一緒にいたっけ。知らないうちに合鍵作られてた時はびっくりしたけど、掃除とかの家事してくれてたから、何も言わなかった。なんか部屋で怖いことなかった?って聞いてきた時は、可愛かったなぁ。自分の家に監視カメラを隠してるなんて思わないもんね。やってたことはバレバレだよって言ってあげたら、真っ青になってた。バイト先にサプライズで行った時は驚いてたなぁ。まあ、そりゃ誰にも言わずにやってたキャバクラでのバイト先に行ったら驚くよね。反省。
そんなことがあったから、先輩のストーカーにもちょっかいを出したくなった。そこで、
「じゃあ、私といろいろ出かけませんか?休日やることなくて暇してたんです」
そうして、ご飯や旅行に2人で行きその写真をSNSに載せてもらった。こういうストーカーってSNSのチェックは常識だからね。一応、うちの写真は顔は隠してくれている。顔バレすると面倒くさいしね。しばらくしてから、ストーカーだと思いますよと先輩に話してあげた。だが、先輩はうちの心配をしはじめてしまった。そういうのは鬱陶しいので、もういっそ決着をつけましょうと提案をした。
先輩の家はけっこう綺麗なアパートだった。そこで2人でいれば食いつくだろう。監視されてるだろうから、面が割れないように帽子を目深に被った。
案の定、玄関が開く音がした。部屋に入ってきた先輩のストーカーを見て驚いた。と同時に口角が上がるのを止められない。
ストーカーは包丁を持っていたため、先輩は警察に通報しようとした。だが、すんでのところで止められた。通報されてはこっちも困る。
驚いた様子の先輩を横目に、ストーカーはうちの顔を見るなり顔が恐怖の色で染まって行く。少しずつ両手が震え出し、包丁がカタカタと上下に揺れる。もう片方の手で持っているスマホも揺れていて、絶対ブレすぎて撮れてないだろうと思うと、笑い声が出てしまった。
ビクッとしたストーカーはそのまま包丁とスマホを床に落とし、まん丸の目でうちを見る。先輩も横で恐怖の顔を向けている。
「やっぱりうちら運命じゃん」
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