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カムルランギの道
僧都での生活が五年を過ぎた頃、ガジに新たな仕事が与えられた。カムルランギの中院に物資を送り届ける仕事だった。昔から山を行き来し、並みの僧よりも体力のあるガジだから選ばれたらしい。
「カムルランギに昇った僧は二度と降りてこられないと思ってましたが、そうでもないのですか?」
書付けどおりにロバに物資を積む手伝いをしながら、ガジは共に仕事を担う僧に尋ねた。イザイという年かさの僧は朗らかに笑って答えた。
「奥院まで昇った僧はめったに降りてこないなあ。しかしカムルランギの道も、歩く者が全くいなくなったら途絶えてしまうからね」
イザイと共に初めて歩くカムルランギの道は、細く、静かで、果てしのないものだった。
木々も生えない道は、昼間は強い日差しが注ぎ、夜になれば急激に空気が冷えこむ。生き物の気配も薄く、進むロバたちの足音と自分の息づかいの他に聞こえるのは、乾いた風が空を渡る音だけだった。見通しの良い岩肌の先に淡く雪の残る絶壁がそそり立つ様は、自分がカムルランギの山に迎えられているようにも、拒絶されているようにも見えた。
六日ほどの旅の後、ガジとイザイはカムルランギの中院へと到達した。
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