悪習

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「わたし、あなたたちのことが大嫌いだった。北川杏子、町田亜実。そして、あなた。黒野桜」  ざくっとスコップを地面に突き刺し、愛梨が桜を真正面から見据える。 「あなただってわかってたでしょ、北川杏子という女がどんな人間か。にこにこと人のいい顔をして近付いてきて、陰ではその人の悪口を言う。いいえ、逆ね。悪口を言うために近付いてくる。表面上では仲良くして、心の中では嘲笑いながら悪口のネタを探している」 「……」 「そして面白おかしく脚色して、それをあなたたちお仲間に聞かせる。まるで宗教ね。あなたたちはそれを有り難く聞いて、あの女と下品に笑い同意を示す。最低最悪だったわ」 「っ、ちがう! わたしは……わたしだって杏子のこと好きじゃなかった」  そうだ。自分はちがう。愛梨と同じように杏子のことも亜実のことも嫌いだった。でも、言えなかったし離れられなかった。そんな勇気はなかった。
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