悪習

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 その日は、どうやって家に帰ったのかよく覚えていない。ただ、愛梨の言葉だけがずっと耳にこびりついている。  誰かの共犯者。  思い出すと腹がたつ。共犯だなんて大袈裟な。自分はただ勇気がなくて杏子と亜実に逆らえなかっただけだ。ある意味、自分も被害者ではないか。それなのに、愛梨はなにもかも桜が悪いとでも言いたげだった。 「ああ、もうっ」  せっかくの休日が台無しだ。スコップまで持たされて穴を埋めるのを手伝わされて、なにが「これからもよろしくね」──ふと、あることを思い出し桜はぶるりと身を震わせた。  愛梨は軍手をしていた。それはもちろん、タイムカプセルを掘ることを目的としていたから自分で準備していったのだろう。地面の上には確かに古びたお菓子缶が転がっていたし。そこへ自分がやってきて、手伝ってと言われたからスコップを手にとった。もちろん軍手などしていない。地面に突き刺さっていたスコップを引き抜いた時、先端にやたらと土が付着していた。まるでスコップの先端に土とは別の糊のようにくっついていたかのように──。
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