悪習

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「あとさぁ、いいこのリーダーさん。なにかあるたびに、みんな仲良くしようよーってウザくない?」 「ああ、口だけリーダーちゃんね。あの子、な~んも考えてないから。仲良くしましょう~で、世界が平和になると思ってるおバカさんだからね」  いいこのリーダーさん、口だけリーダーちゃん。それは、同じクラスの白木(しらき)愛梨(えり)のことだ。口を歪めて悪口をいう杏子のそばで、町田(まちだ)亜実(あみ)が憎々しげにふんと鼻を鳴らす。  そうかなあ?  白木さん、いい人だと思うけど……。  桜はそう思いながらも反論を口にすることができない。喉の奥に鉛玉でも詰まっているかのように声がでず、頷きながら「そうだね」と絞りだすのが精一杯だった。  ここのところ、いつもこうだ。杏子は人の悪口ばかり言っている。人間だから合う合わないはあるにしても、それならば近付かなければいいだけの話。それなのに杏子は表面上では愛梨と仲良くするのだ。自分から積極的に話しかけ、そして、その話した内容をあとで小馬鹿にする。人を集め、本人に聞かれても言い訳がたつように『あだ名』をつけて、ああでもないこうでもないと悪口三昧。
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