悪習

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 結局、愛梨が再び教室に姿を現すことはなかった。学校には来ているけど保健室で勉強をしてるんだとか、いじめを苦に自殺したんだとか、こっそり転校したんだとか、いろんな噂が流れた。そして、そんな噂が流れるたび、槍玉にあがるのは隣のクラスの男子。免罪もいいところである。  そして杏子はといえば、愛梨が学校に来なくなってからも反省の色はまったく見せず、たまに愛梨のことが話題にあがれば「それってわたしのせいなのかな?」と、すっとぼけていたのを今でもよく覚えている。  せいなのかな? ではなく、ハッキリと杏子のせいである。原因を作ったのは北川杏子だ。なのに、彼女は一度として謝罪をしなかった。今なら、あの時の違和感の正体がわかる。杏子はわざといろんな人と仲良くしていたのだ。  誰にでも愛想良く、いい顔をして、おしゃべりの輪に入る。そして目を光らせ耳を澄まし、人の粗を探す。簡単に言えば話のネタを探していたのだ。そうやって人の良いところではなく悪いところばかりをピックアップし、大量のお土産を持ってきたとばかりに、嬉々として自分の取り巻きに話して聞かせる。
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