1話目

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「...。」 「おはよう」 「……おはよ。何読んでんの?」 朝起きると、珍しく妹が起きていた。 いつもなら俺より遅く起きてきて、昼過ぎまで惰眠を貪っているのだが。 今日に限って、早起きだなんて珍しいこともあるものだ。 まぁ、だからといって特に何かあるわけでもないんだが。 ちなみに俺はというと、ベッドの上で本を読んでいたところだったりする。 昨夜読みかけで寝てしまった本を今読んでいるのだ。 「いや、別に何も……」 「ふぅ~ん……?」 なんだろう? 何か言いたげな視線を感じるぞ。 しかし、その割には何も言わず、ジッとこちらを見つめてくるだけだしな。……まさか、まだ寝ぼけてるとかか? いや、それにしてはちゃんとした口調だしな。 「……ねぇ、お兄ちゃん」 「うん?」 妹の表情を見ると、どことなく真剣な感じがした。 何か大事な話でもあるのかと思い、こちらも少し姿勢を正す。 「私ってさ、やっぱり邪魔かな?」 「……はい?」 えっと、一体何を言ってるのだろうかこの子は。いきなりそんなこと言われても困ってしまうんですけども。 「ほら、最近なんか元気ないし こうして部屋に引き籠っちゃうし……」 あー、そういうことね。 確かに最近のこいつは様子がおかしい。 部屋に引き籠りがちになったと思ったら、今度はこんな風に妙なことを言い出したりと、どこか情緒不安定気味になっている気がするな。 「そっか、お前なりに色々と考えてたんだな」 「べ、べつに! 私はただ、ちょっと気になって聞いてみただけよ!」 なんだそれ、ツンデレみたいなセリフだなおい。 まぁ、それが妹クオリティーだと思えば可愛く見えなくもないが。 「大丈夫だよ、心配するなって」 「お、お兄ちゃん……」 頭を撫でながら優しく語りかけると、安心したように顔を綻ばせる妹。……まったく、本当に可愛い奴め。 「だって、お兄ちゃんはいつだってお前のことを一番大切に思ってるからな」 「っ!? ちょ、急に変なこと言わないでくれるかしら!! バカじゃないの!!」 そう言うと、恥ずかしかったのか枕を投げつけてきた。それを顔面キャッチして「ぶへぇ」と間抜けな声を出してしまう。 「ったく、本当に素直じゃねぇなぁ~」 「ふ ふん、どうせ私は捻くれ者ですよーだ」 「はいはい、拗ねるなって」 相変わらずの憎まれ口を叩く妹だったが、心なしか嬉しそうにも見えた。……………… 朝食を食べ終えてから、俺たち兄妹は学校へと向かって歩いていた。 「おい、見ろよあれ」「ああ、マジウケんだけど」「ほんとそれなw」 すると道行く生徒たちがひそひそと話し合っているのが見える。 恐らく、また俺の噂話をしているのだろう。 『あの女たらしのクソ野郎』 『死ねばいいのに』『キモすぎだわ』『早く退学しろよ』 『ていうか、あいつの妹とか最悪じゃん!』 聞こえてくるのはいつも通りの陰口ばかり。……もう慣れたとはいえ、やはり気分の良いものではないな。 「……」 そして、隣を歩く妹もまた同じように嫌そうな顔を浮かべていた。 「ごめんお兄ちゃん、わたしのせいでお兄ちゃんまで悪評が流れちゃってるよね……」 申し訳なさそうに謝ってくる妹に俺は笑顔で応える。 「お前が悪いわけじゃない、俺が悪いんだから」……とは言ったものの、実はかなり堪えている自分がいたりする。 そりゃそうだ、何年経ってもこの扱いは辛いものがある……。 「お兄ちゃん……」 妹は悲しげに俯きながら肩を落としている。……やれやれ、本当に仕方のない子だ。 「大丈夫だって! こんなの全然気にしてないから!」 「……え?」 明るく振る舞いながら背中をポンッと軽く叩いてやる。 「それにさ、こういうのは気にすれば気にするほど馬鹿を見るもんなんだぜ? だから、もっとポジティブに考えようぜ!」 「お、お兄ちゃん……うん、分かった! 私、頑張るね!」 そう言って、彼女は元気よく駆け出していった。 「あ、こら! 走ると危ないぞ!」 そんな妹の後ろ姿を見ながら、思わず笑みがこぼれてしまった。 まったく、本当に世話の焼ける奴だ。……………… 「おはよ~」 教室に入ると、すでにクラスメイトたちは全員揃っていて、各々が好き勝手に過ごしていた。 俺のクラスのやつは別に悪口を言わない、だから、学校に来れる そんな中、窓際の席に座っている一人の少女がこちらに向かって手招きをしてくる。 「おはよう、お義兄さん♪」 「ああ、おはよ―――」 彼女の名前は橘 小守 俺のいとこである。年齢は16歳で、アイドルをやっている、今年の春に高校に入学してからというもの、何かと理由をつけてはこうしてクラスに押しかけてくるのだ。 まぁ、本人はそのことを特に気にしている様子もないのだが。 「それで、今日は何の用だよ」 俺の問いかけに、待っていましたと言わんばかりの表情で鞄の中から一枚の紙を取り出して見せつけてきた。 「ふふん、これを見なさい!」 彼女が手に持っていたのは、一冊の本だった。 表紙には【超絶可愛いJKアイドルのマル秘プライベート】と書かれている。 つまりはそういうことらしい。 「お前も飽きないな……」 呆れたように溜息をつくと、今度は机の上にドンっと音を立ててあるものを置いてきた。 「はいこれ、お義兄さんの分です!」 それは、数枚の写真だった。そこには、先ほどの彼女とは違う人物が写っていた。 「これは?」 「写真集ですよ! 昨日発売されたんですけど、どうですか!!私のこと好きになりましたか!?」 興奮気味に話を続ける。 「ほら、このページなんて凄く良いと思いませんか!?」 そのページには水着を着た女の子が扇情的なポーズをとっている姿が映っていた。 確かに、綺麗な身体をしているが……。 「……」 黙ったまま何も答えない俺を見て、不安になったのか、徐々に声が小さくなっていく。 「あの……ダメ、でしたか?」 「いいや、違う」 俺は首を横に振って否定する。 「ただ、驚いただけだ」 「そ、それじゃあ……!!」 「元々好きだよ」 「きゃー!!!」 嬉しさのあまり、その場で飛び跳ねて喜んでいる。 周りの視線が痛いな……。 「良かったですね、小守さん」 いつの間にか、隣に立っていた女子生徒が話しかけてきた。 彼女の名前は、神楽坂 渚 俺の幼馴染である。 「ありがとうございます、神楽坂先輩!」 「いえ、私は大したことは何もしていませんよ」 「それで、どうしてわざわざ写真を持ってきたんだ? いつもみたいに、家に 来て直接言えば済むことだろ」 そう、それが一番の問題なのだ。 何せ、この女は学校が終わると同時に毎日のように俺の家へと押しかけてくるのだから。 しかも、なぜか俺の部屋でゴロゴロしたり、一緒にゲームをしたりして過ごしている。 正直、勘弁して欲しいところだ。 だが、そんな俺の気持ちなど知る由もなく、 「えへへ~、実は、お義兄さんと一緒に登校したいなって思って!」 などと抜かす始末である。 「それに、最近は物騒じゃないですか」 「物騒?」 「はい、何でも、不審者が出没するとか」 「そうなんですよ、もう怖いですよね!」 二人揃って、神妙な面持ちになる。 どうやら、真剣に悩んでくれているようだ。 「そうだ、いっそのこと二人で住んじゃいますか!」 「はい、名案です!」 「……」 勝手に盛り上がる彼女たちを他所に、俺は深いため息をついた。 全く、相変わらず困った奴等だな。 「お~い、さっきから何をコソコソと話してるんだ?」 不意に背後から声を掛けられた。 振り返ると、一人の男子生徒の姿があった。 彼は、俺のクラスメートで、名前を黒江 翼という。 成績優秀、スポーツ万能、おまけにイケメンと三拍子揃った男で、当然のごとく女子からの人気が高い。 「相棒!もう帰るのか?まだ来たばっかだろう」 「翼、今日本当は授業ない日だからな、それにしても、翼も今日授業ないだろ う?」 「俺は相棒に会いに来ているからな」 そう言って、爽やかな笑みを浮かべる。 「まぁ、そう言うなら別に構わないけど」 「それで、今から何処に行くんだ?」 「図書館だよ、調べたいことがあるからな」 「なんだ、また勉強か? 俺も付き合うぜ相棒!」 「お前は帰って寝ていろ」 「ひどいな~相棒、まぁ そのつもりだけど」 「じゃあ、また明日な」 「あぁ、相棒 また明日」 そうすると、俺は学校出て、図書館に行った。 そして、そのまま閉館時間まで本を読んで過ごした。 それから、帰宅するために校門を出ると、そこには見覚えのある人物が立っていた 「渚、誰を待ってるんだ?」 「勇樹くん! 一緒に帰ろう」 そういって一緒に歩き始めた 「勇樹くんは嫌じゃないの?」 「何が?」 「学校で猫かぶってる私のこと」 「嫌いじゃないよ、でも、心配してる、最近頑張りすぎてるからね」 「..二人でいる時、ゆーくんって呼んでもいい?」 「いいよ、少しはリラックスしないとね」 家の前に着くと、渚はニコニコしながら、また明日といって帰っていった 「ただいまー」 「お帰り、お兄ちゃん!」 「学校大丈夫だったか?」 「うん、翼くんが守ってくれて」 「へぇーあいつが、お礼を言わないと」 「お兄ちゃんこそ大丈夫だった?」 「俺は大丈夫だよ、図書館で本を読んでたからな」 「それもそうだけど.. 子守ちゃん、何かしなかった?」 「あぁ、写真集をもらったぞ」 「むぅ~」 「大丈夫だって、俺は世界で一番、雫を愛してるからな」 そういうと、雫は顔を真っ赤にして、部屋に戻っていった (あの女、やっぱりお兄ちゃんを狙っていたのね) そんなことを考えながら……
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