その刹那的な出逢いは久遠の繋がりとなるか

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 香月がふと目を覚ますと、全身、主に腰の怠さが酷かった。叫んだせいで喉も痛い。もちろん尻も痛い。しかし、何より有り得ないほどスッキリしていた。  それは香月が気を失っている間に一条がリングを外して白濁を吐き出させておいたからという話でなく。つまり香月はこのとき、生まれて初めてにおけるというものを知ったのだ。  「よかった、意識が戻りましたか。すみません、香月さんが可愛くて止まれませんでした」  しゅん、と眉を下げて反省する一条の姿は先程までSubを支配していたDomには見えない。これがあれになるのか、と香月は自分のことを棚に上げて内心で呟いた。  「や、セーフワード言わなかったし……まあ、そういうことです」  香月が気恥ずかしさに薄く頬を赤らめながら許せば、一条は安堵の息を吐く。  「……よかったら、また……しませんか」  そう誘ったのは意外にも香月の方だった。当然、またどころかパートナーになりたい一条が断るはずもなく二つ返事だった。  「香月さん。できれば、カラーを贈りたいのですが……」  緊張の面持ちで一条が尋ねた。カラー(首輪)を贈る、そしてそれを受け取る、というのはつまりパートナーになるということだ。  一条は断られたら何度でも挑戦するつもりで、要するに今ここで望みのある返事が貰えるとは全く考えていなかった。  「それは……まあ……そのうち」  しかし予想に反して香月は案外と乗り気だった。余程プレイがお気に召したのか。ともあれ、一条にとってはこれ以上ない希望の言葉だった。ぱあっと顔が綻んだ。  「ありがとうございます。頷いてもらえるよう精進しますね」  プレイ中や会社での様子からは考えられない一条の可愛らしい一面に、香月は小さく笑みをこぼした。  「あと、名前。別にプライベートの時間はプレイ中もそれ以外も、刹那って呼んでもらっていいですよ。……特にプレイ中はその方が嬉しいかも」  「ありがとうございます、刹那さん。俺のことも遠慮なく久遠って呼んでください」  「わかりました、久遠さん」  「俺は会社でも呼んでもらってもいいのですが」  「嫌です」  「ふふっ」  ぴしゃりと断った香月の、プレイ中以外はDomにも誰にも遠慮のない性格が好きで、一条は食い気味に断られたのにも関わらず嬉しそうに笑った。そんな一条を見ていると香月もつられ、自然と笑みがこぼれる。  など、都市伝説みたいなものだと思っていた。「信じるか信じないかはあなた次第」なら、一度くらいは信じてみても良いかもしれない。そう思わせる一夜だった。
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