39人が本棚に入れています
本棚に追加
2015年3月3日。
麻美先輩たちは卒業式を迎え、あたしたちは二年生としてそれに参加した。
在校生送辞は、生徒会長の水原修吾くん。
卒業生答辞は、元生徒会長の麻美先輩。
誰からも異論はなく、むしろ完全な既定路線。そもそも当時の校内カーストでも、この二人以外に選ばれる理由がなかった。
午前九時半、司会の主任先生が開会を宣言し、その後に卒業生入場、あたしたちは丁寧な拍手で先輩方を迎えた。
国歌・校歌斉唱。歌わない人も数人いたけど、事前に水原くんが歌う理由を話していたから、みんな結構ちゃんと歌っていた。
卒業証書授与は、クラス順の出席番号順。それぞれの担任先生が名前を呼びあげた。あたしたちは壇上を見つめ、親しい先輩のことを目で追ったり、心の中で拍手したり。思い出を辿りながら、飛び立っていく姿を目に焼きつけた。
そして、麻美先輩の名前が呼ばれた。
あたしたち在校生は、一年生も二年生も問わずに大きく拍手した。先生たちが慌てだす。特定の先輩に対して全員が示す敬意を逆に不敬だと睨んでくる。他の先輩方に失礼なのは誰もが理解していた。でも麻美先輩に抱く思いは、感謝なんかじゃ済まなかった。
先輩方も拍手していた。不快感を持つ人は、見る限り一人もいないようだった。
最初のコメントを投稿しよう!