優しい観客と万雷の残響音

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「というものを用意してきたんやけど、私が先生方と話し合って、模範となるように、失礼のないようにって、どこかの誰かが使い回したこと言ってもおもろないやろ。そんなん話し出したら、マジメか、って言われてまう。だから原稿とかなかったことにしよ。  先生方にはホンマ申し訳ないけど、私がこの三年間で考えたこと、感じたこと、伝えたいことを話そうと思う。それこそ私らしいと思わへん?   そもそも私は模範的な生徒やない。反抗もするし、先生方と衝突したこともある。エロいことも考えるし、ま、これは思春期の象徴や。みんなだって心ン中でエロいことぐらい考えるやろ。それが健全や。  私たちは不器用だって、未熟だって、勉強や部活だけやってられへん。恋もするし、失恋もするし、不純だ何だの言われたって、頭ン中は自由やもん。好きな人がいて当然。もちろん犯罪はアカンで。けど、恋ぐらい自由にしとかんと、活力の出し方も分からんくなる。好きな人がいなくたって当然。まだこれからや。私たちはどんだけ年を取っても、まだこれからやって思わなアカン。諦めたら可能性はゼロ。逆に諦めなければ何にだって可能性はある」 これだ⋯これなんだ! あたしたちが先輩から聞きたいのは、定型文じゃない。 先輩の心から出た、本当の言葉が聞きたいんだ! 先生方も、話を止めはしない。先生方も、期待するように壇上を見つめている。
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