霜の降りた道程の先にあるものは

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 大学卒業後…… 加藤は職場で知り合った女性と結婚することになった。 授かり婚である。 妻が出来、少しした後には父親になるという自覚を持ち、一所懸命に仕事に従事するのであった。 そして迎えた出産予定日、加藤は分娩室の前にて無事に我が子が生まれることを祈っていた。 分娩室より産声が聞こえてきた。加藤は天使の鳴らす喇叭(ラッパ)のようなそれを聞きながら分娩室へと駆け込んだ。  そこにあったのは…… 産婦人科医と看護師達が見覚えのある冷たき青ざめた肌で死屍累々と倒れる姿だった。 分娩台で横になった妻も同じである。 その足元にはどこか見覚えのある少女が一人佇んでいた。纏っているのは小さな白い打掛。 少女はニコリと加藤に微笑みかけた。 「あなたに殺されても一緒になりたいと願っていたら、あなたの娘に転生出来ました。これからもよろしくおねがいします」 加藤はこの世のものとは思えない悲鳴を上げた。                             おわり
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