霜の降りた道程の先にあるものは

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霜の降りた道程の先にあるものは

 冬休みに入った大学生二人が雪山へとスノボにやってきた。 其々、名前は「加藤」と「大原」二人は幼い頃からの親友同士である。 この二人のスノボの腕前は上級者クラス。今回訪れた雪山の上級者コースでは物足りなくなり、更に山奥の過酷な未開のコースへと向かうのであった。 加藤と大原が未開のコースの凸凹をトリックエアで超えて楽しんでいると、山の斜面に沿うような吹雪が襲いかかってきた。 もう十分楽しんだことだし、潮時のようだと下山に入ろうとすると、吹雪が激しくなりホワイトアウトが発生し、目の前が純白へと包まれて見えなくなってしまった。  やがて、日が暮れた。それでも吹雪は止むことなく二人の体温をジワリジワリと奪いその体を凍えさせていく。 加藤と大原は肩を貸し合い、お互いにお互いを励まし合いながら真白き暗夜行路を進んで行った。 どれだけ進んだのか分からなくなる頃、大原は蚊の鳴くような声で弱音を吐いた。 「さ…… さむい…… 眠い……」 加藤は大原の頬を叩いた。 「寝るな! 寝たらそのまま死ぬぞ!」 「ダメだぁ…… お前に殴られた痛みよりも…… 吹雪の冷たさの方が…… 痛い……」 「甘えんな! 弱音を吐くな! 絶対に生きて帰るぞ!」 実を言うと、加藤も寒さによって眠気が襲いかかっていた。だが、自分でも言う通りに寝たら死ぬために、眠気を覚ますために叫び精神を保っていたのだった。  二人はお互いに生の確認をしあいながら、前へ前へと進んでいく。 すると、山小屋が見えてきた。極寒地獄に訪れた救済であった。二人は力を振り絞り、山小屋へと駆け込んだ。  その山小屋は板作りのもので、中も伽藍堂で何もなかった。おそらくは何十年も前に作られてそのまま放置された類のものだろう。防寒具や発火器具もなく、言っては悪いが頼りないものだった。 それでも、全身を冷気の拳で殴る吹雪から守ってくれる。二人にとってはそれだけでも十分過ぎる救済に思えるものだった。 後は日が昇り、(ねぐら)としているペンションが出すであろう山岳救助隊が来るまで頑張るだけだ。二人は眠らないように積極的に話をし、体を動かし続けた。
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