クラス委員な2人

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   教室から荷物を取り、俺たちは並んで校門へ向かう。  校門を出たところで、申し合わせたかのように立ち止まる。 「私はこっちだ」  天乃が左側を指差す。 「俺はこっち」  俺は右側を指差す。 「じゃあ、ここでお別れだな」  俺は一歩踏み出して、 「っとそうだ」  と振り返る。  天乃は校門の前から動かずに、俺の方を向いていた。 「ジャンケン最弱同士、とりあえず、これからもよろしくな」  俺が言うと、天乃は首を傾げ、 「どういう意味でのよろしくなのかな?」 「そこもかよ」  俺は苦笑する。 「クラスメイトとしてなのか、恋人としてなのか――」 「いやっ、恋人ではないことは間違いないだろう」 「きちんと具体的に言ってくれないと、わからないだろう?」 「わかるだろう、そこはっ」  言っていて疲れる。  というか若干不安になってきた。  果たして1年間、上手くやっていけるのか? 「さあ、なにに対してかな」  悪戯っぽく訊いてくる天乃に、 「クラス委員としてだよ」  俺は答えた。 「クラス委員として、これからもよろしくな」  そんな俺の言葉に、天乃はまた首を傾げる。 「さあ、どうだろうな」 「へっ?」 「私はいささか不安だ。地村と1年間やっていけるのか」  いや、それは俺の台詞だろう。 「地村は不安じゃないのか。こんな私と1年間やっていけるのかと」 「それはっ……」  ここで不安だと言える奴、いたら手を挙げてくれ。  仮にも相手は女子だ。  俺も不安だよ、なんて言ったら、ろくな未来が想像できない。 「ふふっ――」  狼狽える俺に、天乃が笑いかける。 「冗談だ。さっきも言っただろう。クラス委員に関しては、特になにも気にしてはいないと」 「あっ、ああ……」 「いや――」  不意に天乃が眼鏡を取る。 「そうでもないか」  そして俺の目をじっと見つめた。 「地村となら、ちょっと楽しくなりそうかもなと、そう思ったよ」  不覚にもドキリとしてしまった。 「おっ、おう」  俺は反応に困り、言葉にならない声を漏らす。 「目にゴミが入ってしまった」  天乃はそう言うと、目をこすり、また眼鏡を掛け直した。
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