いつしか愛は毒になる

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麗華はピンクベージュの唇を引き上げると、少し小首を傾げて熨斗のついた箱を雅也に差し出した。 「ご丁寧にすみません……新山(にいやま)と申します」 雅也がお礼を言って、麗華から洗剤のセットを受け取ると床にそっと置いた。 「こちらが妻の早苗です」 雅也が対外向けの爽やかな笑みを浮かべると、私のほうに振り返る。 「早苗です、どうぞ宜しくお願いします」 私は引きつった笑顔を麗華に向けると、すぐに俯いた。 「あら? あのもしかして新山さんって……新山コーポレーションの新山社長でいらっしゃいますか?その社章……」 麗華の目線が雅也の胸元の社章に向けられている。雅也が少し面倒くさそうな素振りを見せながら、「そうですが」とそっけなく返事をした。 「まぁ、なんて奇遇なんでしょう。いつも高坂(こうさか)がお世話になっております」 麗華の言葉に雅也が切れ長の目を見開いた。 「え? まさか高坂社長のお知り合いの方でしょうか?」 (高坂? たしか高坂不動産の……) 私が記憶をたどるのと同時に、麗華がポケットから名刺入れを取り出すと、雅也にさっと渡し、雅也もすぐに自身の名刺を麗華に手渡した。 「これは驚いた……河本さんが、まさか高坂社長の秘書だなんて……そういえば、高坂社長から新しく有能な秘書を雇ったと、先日自慢されたばかりだったんですよ」 「あら。社長がそんなことを……買いかぶりすぎです。恥ずかしいわ」 麗華が頬をピンクに染めると潤んだ目で雅也を見つめた。
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