いつしか愛は毒になる

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「また近く例の都市開発のプロジェクトの件で高坂社長と一杯やりますので、その時にまたお会いしましょう」 「そうですね。仕事もですが、これから隣人としても宜しくお願いします」 「えぇ、こちらこそ宜しくお願いします。河本さんは越してきたばかりですし、もし何か分からないことがありましたら、妻がほとんど在宅してますのでなんでも聞いてください」 「心強いです、早苗さん、宜しくお願いします」 麗華の綺麗な顔が急にこちらに向いて、私は慌ててお辞儀をした。 「あ、こちらこそ私でお力になれることが御座いましたら是非……」 麗華の視線が私に向けられると、汚れた髪のことが気になって鼓動が速くなる。 「じゃあ。俺は少し早いがこのまま出勤するよ。早苗の夕飯楽しみにしてる」 雅也は食べるつもりのない夕飯の話題をだしながら、私に微笑むと、麗華に会釈しながらエレベーターで駐車場へと降りて行った。 雅也の姿が見えなくなると麗華が肩をすくめた。 「引っ越しのご挨拶のつもりが長くなってしまって……ごめんなさい」 「あ、そんなこと……こちらこそご丁寧にありがとうございました……では……」 「えぇ、また」 私はそう麗華に答えると、早く扉をしめようとドアノブに手をかけた。 ──そしてゆっくりと扉を締めようとしたその時だった。 ふいに伸びてきた掌が、私が閉めかけた扉を再び開く。 「早苗さん、少しお時間いただいても?」 「えっ、あのっ……」 「お邪魔します」 そう言うと麗華は強引に家に入りパンプスを脱ぐと、私の手を引いてリビングへと向かった。
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