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すべり台の一番上、仁王立ちして公園全体を見回す鋭い目。ツンツンと立つくらいの短い髪の毛。背丈はあたしと同じくらいで特別大きいわけではないし、手足も長いけれどひょろりと細い。
だけど、みんなをまとめる背中がとても大きく見えて、たくましく感じたことを、鮮明に覚えている。
もう一度、会いたいな。
何度もなんども思っている。
引っ込み思案で自分の思ったことをなかなか伝えられなくて、声をかけたいのに勇気がなくて、そんなウジウジしたあたしだったから、あの子が声をかけてくれることもなかった。
あの子はあの日、あたしの言葉に呆れたような顔をして、「じゃあな」といつものように公園から出ていった。
少し、寂しげに、眉が下がっていた気がした。
いつもの自信満々にキラキラと輝いていた瞳が、その日だけは少し影をまとっていて、いつにもまして、真っ直ぐには見れなかった気がする。
それが、あの子とあたしの、最後だった。
翌日、公園に行っても会えることはなくて、毎日毎日、探してもさがしても、見当たらなかった。
春の満開の桜も、夏の蝉時雨の暑さも、秋の木漏れ日の落ち葉も、冬の積雪の冷たさも、全部ぜんぶ通り過ぎても、もう、あの子に会えることは、なかった。
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