海で出会った彼女

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 大学の友人たちと海に来た。  友人の一人の親戚が海水浴場の近くで民宿をやっているのだが、海岸で遺体が発見されたとかでキャンセルが続き、食事代だけでいいので来てほしいということだったのでみんなで来た。  話を聞くと、発見された海岸とは少し離れているということなので気にせず 海で泳いだ。  俺たち以外にも海水浴客は結構いたが、友人によるとそれでも多い時よりも半分ぐらいの客足みたいだ。  初日の夜に友人の一人が熱を出して寝込んでしまった。  高熱で様子がおかしいということで救急病院に搬送されたが、病院でも原因が分からなかった。  心配しつつも明け方近くには民宿に帰って寝た。  夢を見た。  影のような人が話しかけてくる。影なのではっきり顔が分からないが、声で女の人だと思った。  影は発見された遺体の女性だと言い、犯人探しに協力をするよう言った。  女は協力しないと友人の熱は下がらないと脅してきた。  他にも海には多くの人がいたのに何で友人なのかと聞いたら、友人から犯人の匂いがしたと答えた。  それで友人に憑いて犯人探しをしようとしたが、友人とは相性が悪かったらしく熱を出して動けなくなってしまったので仕方なく一番近くにいた俺にしたらしい。 「よろしくね」  大迷惑だが逆らえない。  病院に友人のお母さんが来た。  お母さんに会ったが犯人の匂いはしなかったので、家族周辺の人間ではない、と女は言った。  海水浴どころではなくなったので解散となった。  俺は仕方なく犯人を探しに大学へ行った。夏休みだが来ている学生は思ってたよりも多い。  同じ大学に殺人犯がいると考えると恐ろしいが、友人を助けるために自分に憑いている女を剥がすために構内を自転車で巡る。  でも、犯人の匂いはしなかったようだ。  友人がアルバイトをしている居酒屋へ行った。  そこに、匂いがあった。  犯人が来るまで何日かかるか分からない。毎日通う金もない。女にそう訴えると、女は数日後に俺から離れた。店の人間に移ったのだろうか。  誰に移ったか分からないが、もう俺には女の声は聞こえなくなった。  数週間後、その居酒屋の近くで男性の変死体が発見されたとニュースになった。  この男が女を殺した犯人か。  これで友人も助かる、と安心した夜またあの女の夢を見た。  俺は女に言った。 「これであいつは助かるんだろう」  女はゆっくりと横に首を振る。  俺が抗議の声を上げると女は言った。 「犯人が一人って言ったかしら。あなたの方が動きがいいのよ。これからもよろしくね」
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