記憶を辿る(前書きにかえて)

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 ・・人間を檻の中で飼う?  そんなこと、絶対にあり得ない。  誰もがそう言うと思います。  実際はそうではなく、子供たちは他の事情で檻の中にいたのかもしれませんが、幼少期の僕にはそう見えたのです。  この檻のあった場所の夢を数十年に亘って、何度も繰り返して見ます。  よほど印象深い出来事だったのでしょう。  夢の中で僕は檻の中にいる子供たちに声をかけられます。  ある子は、「助けて、ここから出して」と言っています。  また他の子は、「学校に行きたい」と願っています。  子供たちは救いを求めていますが、幼かった僕にはどうすることもできませんでした。  絶対にこんなことはあり得ないと思っていても、何度も夢に見ますし、その場所も子供たちの顔も鮮明に憶えています。 「これはきっと幻の記憶だ」  そう思っても、そこにいたある少女の顔が浮かび、彼女の燃えるような瞳が目の前にいるように見えます。  少女と交わした僅かな会話もずっと耳に残っています。  ですが、その少女が本当にいたかどうか、今となっては知ることができません。  あまりにも遠い思い出です。  ですから、これから話す僕の思い出話は、話半分で読んで頂いてかまいません。  読みながら、「それはききょうさんの夢だよ」と笑ってください。  そして・・  この話の中では一般的な倫理観など一切ないことご了承ください。  全ては薄ぼんやりした記憶の中の出来事です。
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