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◆父  その場所は、地元の川を上流へと遡った所にある平地でした。  そこへ僕を連れて行ってくれたのは父です。  僕は小学校の低学年だったと思います。  父とはよく山に登りました。  只のハイキングだったこともありますし、誰も行かないような神社だったこともあります。  他にも廃墟のような建物にも入ったこともあります。  そんな散策を父は好んでいたのか、それとも僕に色んな場所を見せたかったのかどうか分かりません。  父は無口でしたが、時折、真実めいたことをぼそっと言ったりしました。  当時、怖がりの僕に、 「この世界の怖いものには全て理由があるんや。その理由を知れば怖いものなんてないんやで」  そんなことを言っていましたが、幼い僕には怖いものは、やはり怖かったのです。
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