文哉くんの話

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「あれって、『人さらい』なのか?」僕が訊ねると、  文哉くんは、「実は俺もよう分からんけど」と前置きした上で、 「いろんな目的があるみたいやで」と言いました。 「いろんな目的って?」  僕は文哉くんの次の言葉が待ち遠しくて仕方ありませんでした。 「中にはどっかに売られる子供もおるらしいけど」  と、恐ろしいことをさらりと言って、 「親が自分の子どもを何かの理由であの集落に預けている場合もあるらしいで」と言いました。  親が子供を預ける?  その理由も怖いものがありましたが、それよりも「親がいる」という言葉の方が気になりました。 「親がいる子もいるっていうこと?」  僕はアケミちゃんの親がこの世にいて欲しい、そう思って訊きました。
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