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僕と父は集落に足を踏み入れることなく、そこを通り過ぎるような形で歩を進めました。
父は、バラック小屋の集落を僕に見せたかったのだと思います。父はゆっくりと歩いていました。
その頃は貧富の差が大きかったと父に聞きます。
貧の方はかなり貧しかったそうです。
ですが、その頃の僕はそんなことも知らないし、男と女の区別もはっきりと知らない年齢でした。女の子と顔を合わせただけで顔を赤らめたりしていました。
集落が近づくと更に匂いは強くなってきました。
これは残飯が腐乱した匂い・・いえ、それだけではないようです。排泄物、しかも人間の物の匂いに思えます。他にもゴミを燃やす匂いもあります。その証拠に、集落の端から煙が上がっています。何を燃やしているのでしょうか。
その煙を見ていると、強烈な吐き気が起こってきました。何とか耐えましたが、常に吐き気がしている状態です。
「人間というものはな・・本来は汚れているものなんや」父がポツリと言いました。「汚れているし、くさいものなんや」
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