…待てってば。

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新しい父はたまに感が鋭くて困る。 自分の恋心が見抜かれ無いのが不思議なぐらいだ。 雷は息を吐いた。 「はい、雷君。…どうしたの?溜息なんか吐いて。何か悩み事でもあるの?」 雷の分だと缶ビールを差し出した臣は首を傾げている。 「別に何でもね」 差し出された缶を受け取りつつ雷は彼から視線を逸らす。 そんな息子を臣はジ―――っと見詰めた。 「雷君、まさか恋してる?」 「~~~ッ!?」 思わず口の中のビールを噴き出すとこだった。 ゴホゴホと盛大に咳き込む雷の背を臣が摩る。 「大丈夫!?ゴメンね!急に驚かせちゃったかな?」 臣は雷をソファへと座らせ、自分も隣に腰掛ける。 「でも…そっかァ。雷君好きな子いるんだァ」 息子の秘密を知った臣はニコニコと嬉しそうだ。 「べ、別にそうだとか云ってねェし」 頬の赤い雷は目を逸らす。 「隠さない隠さない。…で、相手ってどんな子?もう告白とかした?」 (…人の気持ちも知らねーで) まさか息子が自分に恋しているだなんて臣は夢にも思って無いだろう。 「まだ告って無ェ。…なかなか手出しにくいヤツっつーか」 無難な答えを返す雷に、臣はフムと顎に手を添えた。 「ならいっその事サプライズ的なのやってみれば?」 「サプライズ的?」 眉を潜める息子に父は頷く。 「『熱中症』ネタとか使えるって聞くよ」 「熱中症ネタ?」 言葉を復唱する雷に、臣は少し驚いた顔をした。 「あれ?あのネタってメジャーじゃ無かったのかな?」 独り語との様に呟いた後、臣は雷を見上げる。 「言葉で説明するより実際に僕がやってみるね。僕が雷君役で、雷君が相手役って事で」 勝手に配役を決めた臣は「いくよ?」と言うと続ける。 「あのさ、熱中症、ってゆっくり言ってみて」 彼が何をしたいのか分からない雷だったが、言われた通り言ってみる。 「ね、ちゆう、しよう」 「いいよ」 臣が言葉を返した瞬間に、雷の頬に柔らかいものが当たった。 ―――今のって 唇? 一瞬の出来事に、雷の思考回路は停止する。 「こーゆーネタ。―――って、もうこんな時間だったんだ」 ふと掛け時計を見上げ臣は「よいしょ」と立ち上がる。 「僕、明日早いから先に寝るね。今の手、アリだったら今度好きな子に使ってみるといいよ。それじゃ、雷君おやすみなさい。」 笑顔を向けた後にリビングを去る臣を雷は茫然としたまま見送った。 「好きな子に使えって…」 ポツリと呟いた雷は掌に赤い顔を埋める。 「先に使われたんですけど…」 オッサンなのに小悪魔な義父に、雷の理性は崩壊寸前だ。 今にもふっ飛びそうなソレを死守する為、今夜も眠れない夜を過ごす事になりそうだ。 fin
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