夢じゃねーのかよ。

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夢じゃねーのかよ。

「雷くん雷くん」 マンションの一室の持ち主である北野 臣(きたの おみ)は、義理の息子である北野 雷(きたの らい)の部屋の扉を廊下側からノックした。 その音で、まだ覚せいしきれてない雷はもぞもぞとベットの上のスマホの充電機を探す。 ケーブルを手繰り寄せ液晶画面の時間は朝の2時30時。 まだ眠い目を擦る雷は昨晩臣から頬にキスされたせいで寝不足だ。 そうとは知らないのは、可愛らしい容姿をした義父である臣。 彼は普段、息子のプライバシーを尊重するため部屋には滅多に顔を出さない。 「………なに」 雷の寝起きが良くないのは、臣は既に承知済みである。 だって思春期の男の子だもの、と。 臣は息子の部屋の扉を閉めたまま声をかけた。 「明日の…いや、もう今日になるか」 臣は「商談がね?」と続ける。 「大事なのが…違うか。商談は全部大事だし、大きいとか小さいとか無いし…」 臣は自分でも支離滅裂な事を口走ってる事実に気付いたようだ。 臣は自分の額をドアに当てる。 「ちょっと不安になっちゃって」 臣は眉をハの字に下げたまま笑顔を揺らす。 「雷くんに「パパ、頑張って」とか応援貰えたらなーって思ったり…。ゴメン真夜中に息子の部屋押し寄せて何弱気になってるんだろうね。僕」 反省しながら臣がくっつけた顔を離しかけた時だ。 雷がドアを開けたのは。 内開きの扉に体重を掛けていた臣は部屋の中に倒れ込む。 その身体を支えたのは義父よりひと回り大きい身体付きの義理の息子だった。 筋肉質な腕に抱き締められた臣の耳元で雷は囁く。 「…頑張れよ」 雷はクシャクシャと臣の頭を撫で付ける。 「オヤジ」 「〜〜〜ッ」 初めての親父(オヤジ)呼びと義理の息子の行動に臣は感激に打ち震えた。 もう、大丈夫。 仕事でヘマして親子ともども路頭に迷って仕舞わないかなどという不安はしっかり払拭できた。 「雷くんありがとう!大好き!」 ギュッと雷に回した腕にちからを込めた後で臣は自分の部屋へと戻って行く。 雷はその背中を見送ってベットに潜った。 「いー夢見た」 それが現実だったと言う事実をフラッシュバックさせられたのは、雷がスマホの時間を確認した時だった。
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