どうしてくれよう。

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どうしてくれよう。

「らーい君」 とあるマンションの一室。 リビングのソファで顔に開いた雑誌を載せたまま寝ていた義理の息子を覗きこんだのは義父、北野臣(きたの おみ)だ。 「…ん?」 寝ぼけた様子の北野雷(きたの らい)が首を動かしたせいで雑誌が床に落ちた。 それを拾いあげ、臣はなおも雷の間近で彼が完全に起きるのを待った。 「僕これから料理教室行くんだけど、雷くんも一緒に行かない?」 (場違いだろ。俺が行ったら。) 若い婦人に囲まれて2メートル近い身長の自分が臣とお揃いのピンクのエプロン(入会特典らしい)を着て親子で並んだら違和感ありまくりだろう。 覚醒しきれてない身体で雷は脳内ツッコミを入れる。 臣は続けた。 「若い男の子来たら教室の皆もはしゃいで…」 喜ぶと思うよ。 言いかけた途中で臣は独り言ちた。 「そしたら皆に雷くん取られちゃうか」 ポツリと言葉を零す。 「やっぱり止めよう。雷くん連れてくの」 立ち上がった臣は雷に背を向けた。 ようやく雷は口を開いた。 「…なんすかそれ」 臣は振り返る。 雷は続けた。 「嫉妬…すか?」 臣はイーと子供じみたジェスチャーを返した。 「そだよ」 じゃあ僕だけで行ってくるね。 手にした雑誌をテーブルの上に置き、出掛ける準備をした臣は玄関へと向かった。 「今日も教室で美味しいおかず作って来るね」 楽しみにしててね。 玄関の扉から外に出て行く臣。 1人室内に残された雷は顔の上で両腕を組んだ。 顔は鮮やかな朱色に染まっている。 雷は知ってる。臣はただ父として誰かに子供を取られたくないだけだと言うことを。 ーーー知ってはいるのだが。 嫉妬とか…。 「可愛い、過ぎんだろ…」 去り際の義父のはにかんだ表情を思い出しながら雷はその場で幸福感に浸った。 fin
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