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心配なんすよ。
北野雷が通う高校の校門前。
「らーいくーん」
義父である北野臣は大きく手を振った。
名を呼ばれた制服姿の雷は目を丸くする。
「おみさん会社どうしたんすか?」
「早上がりしてきた」
にしても。
「雷くん、今日は夏期講習最後まで出たんだね。偉い偉い」
つま先で背伸びをした臣は義理の息子の髪を撫で付けた。
「この時間帯なら一緒に帰れるなぁって思って」
複雑な表情をしたのは雷だ。
「…おみさん、俺等外で会うの止めません?」
「えっ?なんで?」
動揺した臣は口に片手をあて続ける。
「あ、こんなオッサンが保護者ってバレるの嫌だった?」
義理の息子の言葉の意味に見当をつける臣。
「違くて」
雷は臣を宥める。
「俺の身内ってバレたらおみさんの身が危ぶねーつっーかなんつーか…ただの取り越し苦労ならいんすけど…」
「雷くん『取り越し苦労』だなんて難しい言葉良く知ってるね」
ほんわ〜と臣。
「おみさん俺のことバカにしてるんすか?」
「して無いして無い。ちゃんと勉強もしてる、自慢の息子だなーって思ってるだけだよ」
にこーとした臣の笑顔が優しい。
雷は知らなかった。
自分の事をこんなに評価してくれる大人がいるなんて。
悪さをしてもしなくても、世間の目は雷を素行不良少年というレンズ越しでしか見なかった。
雷もそのうち、一般的な意見に流され、いつかヤクザ者にでもなって周囲を脅かす存在になるだろうと将来を軽視していた。
けれど。
其処に臣が現れた。いつくみ深き愛で雷を包み込み、今では雷にとってただの『惚れた人』以上の存在となった。
だからこそ。
だからこそだ。
雷に敵対意識を持つ奴等に臣が襲われないか内心ヒヤヒヤしていた。
だと言うのに臣は幸せそうな笑顔を浮かべるばっかりでーーー。
「暑いからアイスでも買いにコンビニ寄ってく?」
義理の息子と帰えられる事にウキウキしてる義父に標準を合わせ。
「俺スイカバー食いたいっす」
密かに大好きな臣を守ろうと決意した。
夏の気分を盛り上げる様な入道雲をバックに雷は自然と笑みを溢した。
fin
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