7/終

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7/終

「さーて、試作第一弾! 食べて、食べて!」  カレースパイスセットを買ってきて、なんの工夫もなくただ組み合わせ、トマト缶詰やらほぼペーストのキノコやらを放り込んで作ったこだわりスパイスカレー第一弾は、彼女が食べられる辛さではなかった。不味いわけでも、かといって美味しいわけでもない鍋いっぱいのカレーを、私はモリモリ食べた。  彼女は甘くするために、すりおろしりんごや蜂蜜を加えた。もちろん、シナモンも。  一瞬、母のカレーに似た。  飽きるほどに食べているようで、けれど日々進化していくカレーは、毎日の楽しみと化していた。 「そろそろあれを聞きたいなぁ」  もうお店を出したらどうだろうかと提案したくなるほど美味しいカレーができた頃。彼女は私に、ニヤリと笑いながらそう言った。  あれ、というのがなんのことだか、分かっていた。  けれど、あれを現実世界で言う人がいるものか。  私は恥ずかしさから、誤魔化した。 「うん、さすが――ギャバンだね」  まさか、母と大事な人が、ひとつのキッチンでカレーを作る日が来るだなんて。  なんて幸せなんだろう。  ふたりの優しい心が私に見せてくれた世界。  甘くて、あたたかい、幸せな世界。 「あー! それ、全部入れちゃダメですよ!」 「おっと、こっちはもっとモリモリです」  彼女のアドバイスが、部屋に響く。 「あら、そうなの?」 「なるほどねぇ」  キラキラとした笑い声。美味しそうな香り。我慢できずに鳴るお腹。  私はふたりの笑顔を見ながら、嬉しくなって、ふふ、と笑った。  そして、そっと、心の中で、願う。  これからも、ふたりのおいしい料理を食べられますように。 〈了〉
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