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「甘やかすな、アルカ。この世界には、働かざる者食うべからずという言葉が……」
この異世界にも、私が前世で過ごした国と同じ言葉があるということを学ぶ。
「私にできること、私にできること、私にできること……」
「狭い店に、接客は必要ないからな」
「せめて、うどん一杯分……」
「必要ない」
ディナートこと、ディナさんと私の睨めっこ状態は続く。
大抵は、店の手伝いをすることで食事代をなんとかできる流れだと思っていた。
でも、人を雇う余裕のない店での食事は、私に労働という選択肢を与えない。
「だーかーらー、俺が払うって言ってんじゃん」
「甘やかすな」
「甘やかすよ。ミリちゃん、野垂れ死にそうだったんだから」
アルカさんはお店が必要としている食材をメモしながら、ディナさんを説得しようと声という援軍を送ってくれる。
「そんなに嫌? 自分の料理をタダで提供するって」
「当たり前だろ。ボランティアならともかく……タダで食事を提供するっていうのは、自分の料理に価値がないって言われているようなものだ」
ディナさんのお怒りは、ごもっとも。
私も前世で、世間の人たちよりもほんの少し絵が上手いからという理由でイラストを無償提供したことがある。
そこに善意も厚意もなく、私は都合よく利用された。
私も、自分が必要とされるなら無償でもいいやって悪い人たちに乗っかってしまった。
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