初めての異世界農業は、『温たまトマトリゾット』と共に

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「まずは、俺が借りている畑で魔法の練習からかなー」  こんなに幸せでいいのかな。  こんなに幸せで、後々に大きな不幸がやってくるとか絶対に嫌だ。 「アルカさんは、どれだけの土地を借りているんですか?」 「俺?」  大きな幸せの後に、不幸はやってくる。  この言葉は、あながち間違っていない。  そう思ってしまうような出来事が、この後に待ち構えていた。 「…………んー……俺、土地を借りるのに苦労しないというか」 「え?」  大きな幸せの後には、必ず不幸が待っている。  らしい。 「そこらへんの畑は耕し放題っていうか……」 「え?」  ああ、これがお金持ちというものなのか。  仲間だと思っていたアルカさんを、急に遠い存在に感じてしまう。 「すみません、あの、触れてはいけないことでしたよね……?」 「いや、あの、正確には親父の土地だから! 俺は末端っていうか……」  アルカさんの言い分は、私にだって理解できる。  アルカさんがお金持ちの理由は、両親や祖父母の皆様が頑張ってくれたおかげだから。  アルカさんは、そう伝えたいのだと思う。 「ミリちゃん」 「ここからは、私一人の力で頑張ります!」 「ミリちゃん!」  無理をしているわけでも、意地を張っているわけでもない。 「アルカさんの体は、多くの方に愛されるべきものです」  アルカさんのご実家がお金持ちということは、アルカさんの将来を期待している誰かがいるということ。  アルカさんは私が好き勝手にお付き合いできるような相手ではないということを悟ったから、私はアルカさんとの距離を取り始める。
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