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「もっと仲良くしたいなぁ」
私と一緒に調理風景を見学するものだと思っていたアルカさんが立ち上がって、鞄の中から何かを取り出す。
鞄の中から出てきたのは、トマトの絵柄が貼り付けられている缶詰……。
(っていうか、なんで缶詰が……?)
トマト缶らしき物を手にしたアルカさんは、それをディナさんの元へと持っていく。
缶詰の中からは絵柄が指し示す通り、トマトの水煮が溢れ出てくる。
「ディナートさん、生の食材しか使わないものかと思っていました……」
「生が美味いのは否定しない。でも、楽できるところがあったら楽をするようにしてる」
「美味しい料理を作るために努力した結果、体を壊したことがあるディナなのでした」
ディナさんが楽できるところは楽する理由を、アルカさんは丁寧に説明してくれる。
ディナさんに足りないものはアルカさんが補って、アルカさんに足りないものはディナさんが補う。
そんな関係性が二人の間に成り立っているような気がして、心があたたかくなってくるのを感じる。
(私はアルカさんの身を心配して、アルカさんのことを遠ざけてしまったけど……)
結果として、それはアルカさんをお金持ちだから遠ざけたと言っているようなものだと気づかされる。
アルカさんが向けてくれる厚意も好意も信じて、アルカさんと仲良く今まで通りの関係でいれば良かった。
それなのに、私はアルカさんとは住む世界が違うってことを理由にアルカさんを拒んでしまった。
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