初めての異世界農業は、『温たまトマトリゾット』と共に

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「調理補助としても雇ってよ」 「おまえが体を壊すぞ」 「健康だけが取り柄です!」  ディナさんのように、普通が一番だと気づかされた。  アルカさんが求めるものが、普通。  アルカさんが今まで通りの関係を求めていたのだとしたら、私がやったことはとんでもなく愚かなことだった。 「アルカさん、あの……って!」  メスティンっぽいものの中にバターとご飯が加わり、バターの良い香りが辺りに広がり始めたときのことだった。 「その液体は……」  三人分のメスティンで手際よく調理をしていくディナさんが、何やら謎の琥珀色の液体を注いでいく。 「マーポッカから取った出汁に、野菜を加えて煮たてたスープ……」 「あー……」  マーポッカという言葉がなんなのか。  聞かなくても、なんとなくモンスターの名前かなってことは想像できる。 (前世と共通した食材もあるのに、何? マーポッカって何!)  後々にマーポッカを知る機会があり、そのときの知識によるとマーポッカは鳥型のモンスター。  化け物のような恐ろしい外見ではなかったことに安堵するという展開が待っている。 (コンソメ的なものだよね……コンソメだと思えば……)  海外旅行というものに縁のなかった私は、海外の人には馴染みが合っても日本人は口にしない食べ物。  そんな海外ならではの食文化知識に疎い。  食文化への理解が遅れているため、異世界のモンスターを口にするためには莫大な勇気が必要だった。
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