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「え、え、え……?」
何度、『え』と声に出したところで事態は変わらない。
忙しなく活動する人々が行き交う中、私は状況も事態も飲み込めずに呆然と立ち尽くす。
「今日は米にするか……それともパンか……」
「両方食べればいいだろ」
「いや! 今日は、どっちかを選びたい気分なんだ!」
米。
パン。
通り過ぎた働き盛りのおじさまたちから、耳馴染みのある言葉を拾う。
(うっ、お腹が……)
空腹を知らせる音が、お腹の中で大暴れしている。
衣服ですら満足に整えることができていないのに、ここで空腹に襲われるなんて運がない。
「きょうはね、ごはんたべるの!」
「じゃあ、ママとパパはパンにしようかな」
ごはん。
パン。
自分が立たされている環境は、まったく見知らぬ土地だと確信が持てる。
自分が生きてきた世界は西洋風の世界ではなく、ビルが立ち並ぶ現代日本。
ガラスや金属を多用した外観の高層ビルは、さぞや眺望も素晴らしいはず。
そんな多機能性を兼ね備えた高層ビル群に慣れきった私の視界には、まるで西洋風の世界観を舞台にしたゲームのような光景が広がっている。
私の視界を通り過ぎて行く人々の口からは、聞き慣れた単語が飛び交う。
(お腹の音が止まらない……)
やっぱり視界に映る世界は何度見直したところで初めましてのはずなのに、人々の会話に紛れ込んでいる単語だけは初めましてではないことに気づく。
「この世界には、ごはんもパンもある……!」
マンガ家を夢見ていた私なら、今の自分にどんな運命が与えられているか察しがつく。
これは異世界転生か転移か召喚というもので、マンガ家を目指していた前世の私は何かしらが原因で異世界にやって来たということ。
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