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(マーポッカも気になるけど、いつ、アルカさんに謝れば……)
アルカさんに謝るタイミングを逃しているうちに、ディナさんは仕上げに取りかかる。
恐らく塩コショウで味が調えられ、トマト色に煮詰まっていくご飯の味を想像しただけで喉がごくりと動き出す。
「仲直りするなら、今のうちにな」
アルカさんは、いつも通りに私と接してくれる。
いつもと違う態度を取っているのは、私だけ。
そんな私を助けようと、ディナさんが声をかけてくれる。
「仲直りっていっても、別に喧嘩したわけじゃ……」
「アルカさん!」
異世界転生というものが自分の身に起きたとき、始めに会うのは神様や女神様のような存在だと思っていた。
でも、それらの存在は私の目の前には現れてくれなかった。
私を助けてくれたのは料理人のディナさんと、食材を調達しているアルカさん。
どっかのお金持ちのアルカさんではない。
「私には、アルカさんの家の事情が分かりません」
話は真面目なものなのに、ディナさんは謎のたまごをメスティンもどきに投入していく。
その姿に恐怖のような楽しみのような、いろんな感情が混ざっていく。
「なので」
もう調理用の火が必要ない段階まで来たらしく、私とアルカさんの会話の邪魔をしないようにディナさんが合図をくれる。
「火を消すときも、願ってみて」
私が言葉を発しようとすると、アルカさんが優しい声で言葉をくれる。
いつまで経っても、私は伝えなければいけないことが伝えられない状態が続く。
「おっ、消えたね」
「はい、できました」
でも、言葉を濁して終わりなんて嫌だと思った。
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